アニメ「ULTRAMAN」キャストインタビュー【vol.2】江口拓也さん
2019.01.15
ANIME&MOVIECOLUMN
「月刊ヒーローズ」にて好評連載中のコミックス「ULTRAMAN」。累計280万部の売り上げを誇る本作が、2019年春、フル3DCGアニメとしてNETFLIXにて全世界配信される。
今回は、その記念として組まれた特別企画・制作陣インタビューの第2弾。お答えいただくのは、諸星弾役を演じる江口拓也さん。ウルトラマンは幼少期の人生そのものだという江口さんに、収録時のエピソードや作品に対する熱い思いを語ってもらった。
小さい頃に支えてもらったウルトラマン。衣装ケースいっぱいにソフビ人形を持つほど。
--今回のULTRAMANにて、声を担当することになった経緯や感想をお聞かせください。
江口拓也さん(以下、江口):諸星弾役のオーディションに参加したことがきっかけです。小さいころから大好きな作品だったので、受かったときは2018年の中でもかなりうれしかった出来事の1つでしたね。ただ、それだけに役作りをするときは、どこまであの頃の「セブン」をイメージするかはとても悩みました。今回の作品では、最終話に諸星がメガネをかけるシーンがあるのですが、そこは雰囲気というか、実写版の「ウルトラセブン」を意識して演じました。
--かなり思い入れがあるようですが、江口さんにとって「ウルトラマン」は、どんな作品でしょうか?
江口:小さいころから支えてもらっている作品ですね。僕の家は両親が共働きだったので、小さいころは家で独りで過ごすことが多く、そんなときに「ウルトラマン」や「ウルトラセブン」、「ウルトラマンタロウ」といった特撮作品をよく観ていました。衣装ケースいっぱいにソフビ人形も持っていて、小さいころの人生そのものといってもいいくらいですね。
--そんな夢中になって観ていた「ウルトラマン」では、どのシリーズやヒーロー、怪獣が好きですか?
江口:やっぱり「ウルトラマン」や「ウルトラセブン」といった、昭和に放送していたシリーズですね。その中でも一番記憶に残っているのが「ウルトラセブン」です。やはりメガネで変身するところが印象的で、子供のころはウルトラアイが欲しかったのを覚えています。怪獣では、レッドキングも好きですけど、とくにゴモラが好きです。角の形が良いですよね(笑)。あと、ゼットンも好きな怪獣の一つです。
諸星弾は努力を見せないキャラ。「共感できてかっこいい男」
--ご自身が演じている諸星弾はどんなキャラクターでしょうか? 読者に向けてご説明をお願いします。
江口:諸星は、非常にストイックなキャラクターです。完璧に見えるけど、見えないところで努力をしている泥臭い人物。そこがとても共感できるし、かっこいい男だなって思います。そういった感じをどこまで出せるか意識して演じました。
--原作コミックの諸星にもそういった印象を感じましたか?
江口:もちろん原作でもそのストイックさは感じられました。とくに原作コミックでは彼の葛藤の部分が描かれていたので、アフレコの際にはその背景も意識して役作りをしました。パッと見では「すごい奴が出てきた」なんですけど、そこにとどまらない魅力や深みのようなものがあり、自分でもその部分を出したいと思って演じましたね。
--原作コミックはずっと読まれていたのでしょうか。
江口:はい、1巻からずっと読んでいます。発売当時からかなり話題になっていましたし、自分としても思い入れのある「ウルトラマン」が、こうした形でコミックになることに驚きましたね。
特別感を出さないように努力。「興奮しないように演じました」
--「ウルトラマン」という長い歴史のあるシリーズにかかわることが決まった際に、意識したことはありますが?
江口:思い入れが強いシリーズだけに、そういう特別感を逆に出さないように意識しました。もちろん、日本を代表するすごい作品に関わっているという意識はあるのですが、どんな作品でもマイクの前では同じエネルギーで臨みたいので、自分を律して、あえて興奮しないように演じました。もしかするとそこは諸星のキャラクターと重なる部分があったかもしれません。とはいえ、演じていると自然に気持ちが上がっちゃうんですよね(笑)。それはやはり、各世代のキャスト陣がみんな「ウルトラマン」を通じて話せる、作品愛にあふれた現場の雰囲気があったからだと思います。
--とくに印象に残っているシーンなどがありましたらお聞かせください。
江口:本作は真面目でシリアスなシーンが多いのですが、その中でも唯一、レナと楽しそうに話している進次郎に向かって諸星が「殺す」と圧をかける、ちょっと笑えるシーンがあるんです。そこでようやくギャグ的なシーンができたというか。原作コミックスで読んでいても面白いシーンだったので、ほんわかするし、諸星の違った側面を見せることができて印象に残っていますね。ただ、短い尺の中に長いセリフが入るので、合わせるのに苦労しましたね(笑)。あんなに早口でしゃべったのは初めてで、神山監督からも「とりあえず、トライしてみて」と言われて、何テイクかやらせていただきました。それだけに、こだわりのテイクになっているかと思います。
木村良平さん、神山監督とは約9年ぶり。共演すると聞いたときは「ガッツポーズ」
--先ほど、「作品愛にあふれた現場」というお言葉が出ましたが、印象に残っている共演者の方はいらっしゃいますか?
江口:木村良平さんですね。やっぱり良平さんは「ウルトラマンだな」って感じを受けました。実は僕が声優としてデビューしたとき、初めてオーディションに受かった作品でご一緒したのが良平さんなんですね。それから背中をずっと見ながらこの業界をともに歩んできた、とても信頼のおける先輩なんです。そんな、自分の中でも個人的に思い入れのある先輩と肩を並べて、ウルトラマンとウルトラセブンを演じられたのは本当にうれしかったですね。
--木村良平さんと共演することを最初に聞いたときはどう思われましたか?
江口:ガッツポーズでしたね(笑)。さらにこれも偶然なんですが、良平さんと共演したその作品も神山監督の作品だったんです。今回の「ULTRAMAN」は、その作品から8年~9年ぶりで、そういった意味でも、いろいろな思い入れがある作品になりました。
--神山監督とは以前から面識があったと。今回、再会しての印象はいかがでしたか?
江口:神山さんはその頃からまったく変わらない物腰の柔らかさで、久しぶりでもそんな感じがまったくしませんでした。デビューした当時、何もなかった僕を使っていただいて、その作品があったからいまの自分があると思っているので、そんな神山監督と再びご一緒できたことは感無量でしたね。
--そんな神山監督と今回コンビを組まれる荒牧監督の印象はいかがでしょうか。
江口:今回は役者との関わりは神山さんがメインで、それを裏で支えてくれるのが荒牧さんという役割分担だったんですね。荒牧さんとは直接かかわることは少なかったのですが、神山監督と同じく物腰がとても柔らかくて、現場をつねに見守ってくれていました。
--「ULTRAMAN」で、自分が演じるキャラ以外で好きなキャラクターなどがいましたらお聞かせください。
江口:そうですね。ウルトラマンもかっこいいですし、エースもかっこいいから迷いますね。とくに終盤のエースの奮闘は、潘めぐみさんの迫真の演技もあいまって心が打たれました。ラストはもう、主人公のような活躍だったので、そこはぜひ注目して皆さんにも見ていただきたいですね。
ぜいたくな現場で作られたアニメ。「とんでもないエンタテインメント」
--これから「ULTRAMAN」を視聴するファンに向けて、見どころやメッセージをお願いします。
江口:キャスト陣が魂を注いだ演技はもちろんですが、この作品には、それ以外にも素敵な要素が数えきれないほどあるんです。映像美、戦闘シーンのカッコよさ、それから音楽ですね。音楽を担当するクリエイターの方々が、各シーンの絵やキャスト陣の演技を視聴して、それに合わせて音楽を作ってくれているんです。そういったぜいたくな現場はなかなかないんですよね。各セクションがお互いに作用しあって、バトンを渡し合うみたいなところに役者としても感動しましたし、あらためて“みんなで作品を作ってるんだ”ということを実感しています。その甲斐あって、本作はアニメなんだけど、アニメとはまた違った、とんでもないエンタテインメントになっていると思います。いまはいち早く、多くの人に見てほしい気持ちでいっぱいですね。
■プロフィール
江口拓也(えぐち・たくや)
声優。81プロデュース所属。2008年、『真救世主伝説 北斗の拳 トキ伝』で声優デビュー。2011年4月、木村良平、代永翼の3人で音楽ユニット「Trignal」を結成。ラジオ大阪「Kiramune Presents 江口拓也と木村良平と代永翼のキラキラ☆ビート」のパーソナリティーを担当するなど、マルチメディアで活躍中。アニメ「ULTRAMAN」では諸星弾役を務める。
【アニメ出演代表作】
「俺物語‼︎」剛田猛男役 、「アイドリッシュセブン」六弥ナギ役 、「BAKUMATSU」桂小五郎役
取材・文/岩片 翼
写真/入江輝彦