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神山健治×荒牧伸志 両監督インタビュー “原作ファンの期待を受け止めつつも、アニメなりの面白さがちゃんと出た作品になりました”

2019.04.27

ANIME&MOVIE

 

4月1日(月)より、Netflixにて全世界独占配信されたアニメ「ULTRAMAN」、

PVや本編映像の一部等、YouTube・Twitterに投稿した動画の合計再生回数は2000万回を超え、全世界で話題沸騰中です!

 

アニメULTRAMANを、是非、今年の大型連休に是非一気見して頂きたい!

ここでは、配信直前に伺った両監督のインタビューをお届けします。

尚、現在発売中の月刊ヒーローズ4/1売り号では、より詳しいインタビューも掲載中ですので是非併せてチェックください!

 

 

――『ULTRAMAN』が配信開始です。連載中の作品ということもあって、いろいろ工夫が必要だったのではないでしょうか?

 

荒牧 そうですね。ストーリーをどうまとめるかは、大きな問題でした。最終的には原作寄りの内容になったんですが、シリーズとしてある程度の決着は必要なので、「ラストをどうするのか」という部分はかなり話し合いました。

 

神山 最初は「SEVEN編」ぐらいまでしかできないんじゃないか、という話もありましたよね。

 

荒牧 ありましたね。

 

神山 制作がスタートした時点で原作は「ACE編」までは終了していて。そこまでやれば一区切りつくということはわかっていたので、脚本チームに、一旦原作からセリフだけ抜き出してもらって、その通りに進めたらボリュームがどうなるかを確認しました。そこで「8巻まではなんとかできるんじゃないか」という見通しが立った感じです。脚本開発だけで8カ月ぐらいはかかりました。

 

 

――進次郎というキャラクターはどんなキャラクターだと思いましたか?

 

 

神山 熱血なところもあるけれど、そこまで単純でもなくて。最初はなかなかイメージを掴むのに苦労した主人公でした。それでも、脚本チームと打合せしている時に、「これはイマドキの少年なんだ」ということに気づいて、そこが落としどころになりました。「運命に目覚めた」なんて力んでしまったら、イマドキはかえってリアリティがないよな、と。そこが進次郎のベースになりました。

 

荒牧 そうですね。進次郎がそういう少年だからこそ、周りの人をどう描くかが大事でした。例えば諸星(弾)は、最初は進次郎に厳しいものの、物語が進むにつれて進次郎に対する評価を変えていくキャラクターになっています。一方で進次郎も、アイドルの佐山レナなど周りの人たちとの関わり合いでどんどん変わっていく。そういう話になっています。

 

神山 今回のアニメ化にあたってレナは、ちょっと踏み込んで描きました。進次郎の変化を表現する上で重要なキャラクターになっています。

 

 

――シリーズを通じて大変だったエピソードはどこでしたか?

 

荒牧 間違いなくレナのコンサート回(第8話)ですね。

 

神山 あれも最初はやる予定はなかったんですよ(苦笑)。そもそも最初は、現状の制作能力からしたら、もっとシンプルに「1話完結の怪獣退治」をベースにしないとこのシリーズは作れないんじゃないかと考えていたぐらいで。でも、いろいろ考えるうちに、連続ドラマとして大きな物語を見せるスタイルでいくしかないとなって、その結果、まさかアイドルコンサートのシーンまで作ることになってしまったんです。

 

荒牧 普通ならクライアントさんが「こういう派手なシーンを作りましょう!」って持ってくるんでしょうけれど(笑)、今回はストーリー上どうしても必要ということで、こちらから「コンサートをやりましょう」と提案して、曲も振り付けもお願いしたんです。コンサート会場のモブにもすごく力が入ってます。

 

神山 ほんとはアイドルを増やしたほうが視聴者的にはいいんでしょうけれど(笑)、その後の展開を考えるとある意味、観客が主役という部分もあるエピソードなので、モブは大事でしたね。あとやはり、ヒロインとしてレナの立ち位置を明確にする必要があって、そのためにもこのコンサートは大事なシーンにしなくてはいけませんでした。

 

荒牧 原作だとイガルにまつわる事件の種明かし編という部分がまずありますが、アニメのほうではむしろ、ULTRAMAN=進次郎とレナの関係が変化していくエピソードとして重要になっていますね。

 

 

――原作と比べると、レナがULTRAMANに言う「あなたが本当にウルトラマンなら、ここにいる全員を助けて」というセリフが加えられています。

 

 

神山 今回のシリーズをひとつの物語と考えた時、レナが「ウルトラマン好きなアイドル」という立ち位置だけにとどまると、どうしてもドラマへの貢献度が低くなってしまうんです。レナのような「可愛い女の子」って3DCGで描くのにすごくカロリーがかかるんです。だから手間を掛けて登場させるのなら、もっとドラマに立ち入ってもらったほうが、登場のさせがいがあるなと。それで第7話でレナに自分の過去の話をさせて。それを受けて第8話のULTRAMANへのセリフがあるんです。

 

荒牧 ミーティングの時に神山さんが「レナの方向性を変えよう」と言ったんですよ。それで、『ウルトラマン』に言いたいことがある、というキャラクターになった。そこをベースにいっぱいシーンを洗い直したんですが、今回のシリーズはそれが結構、アクセントとして効きましたね。第11話でレナが待っているところに、進次郎がやってきて、会話しているところを諸星に突っ込まれ痛い思いをする。僕はあのシーンが大好きなんです(笑)。

 

神山 (笑)。進次郎役の木村(良平)君も第11話のアフレコの時、僕のところにやってきて来て「監督、俺、この話数、大好き」と(笑)。進次郎の成長は何段階かあるんですが、そこでギアが入るためのエピソードとしてレナとの関係をピックアップしました。それのひとつのゴールが、ラストの戦い前の第11話のエピソードですね。

 

荒牧 進次郎をヒロインが認めるという回なので、すごく意味合いが出ましたね。

 

神山 やっぱり主人公は、シリーズを支える一番太い柱であるべきで。進次郎がちゃんと成長していないと、エースが出てきたら、エースのほうが圧倒的に存在感が出てしまうことになりかねないので。

 

荒牧 エースは生い立ちも一番重いキャラクターですからね。進次郎が北斗に直接問い詰められるシーンもあるので、それもあって彼の変化はきっちり描かないといけないと思いました。

 

神山 ちょっとチープな言い方になるんだけれど、後半の脚本作業は、キャラクターに魂が入ったというか、セリフを自分たちから言ってくれるように感じられた瞬間がありましたね。

 

 

――今回、モーションキャプチャー(役者の動きを3DCGに反映する仕組み)を使っているそうですね。

 

神山 そうです。僕はモーションキャプチャーを使うのは初めてだったんですが、現場で役者さんとやりとりをしながら演技を作っていくというのは、“演出をしている”という実感があっておもしろかったです。

 

荒牧 モーションアクターの人たちは、僕が10年ぐらいずっと一緒にやっているチームです。彼らは自分たちの演技がどういうふうに3DCGに反映されるかを知っているので、映像でうるさく見える余計な動きを抑えるべきところと、お芝居で見せるところの区別もついていて、最適化できているチームなので安心して進められました。今回は『ウルトラマン』ですから、そういうアクションがひとつウリになる作品だろうという読みがあったんですが、うまくはまりました。

 

――しかも、モーションキャプチャーそのままではなく、さらにアニメーターの手も加わって完成映像になっているとか。

 

荒牧 そうなんです。ひとつひとつのアクションに、これはモーションを生かしたほうがいいのか、アニメーターが手付けを加えたほうがいいのかせめぎあいながら進めていきました。最終的にはそこがうまく融合した感じになりました。

 

神山 まず「モーションキャプチャの良さを活かさなければこの作品は完成しない」というのは前提なんです。でも同時に「モーションアクターが演じたんだから、このままでいい」というわけにもいかないんです。

 

荒牧 なかでもレナのお芝居は難しかったですね。アイドルのときと普段とでは落差も出したかったので、家に帰ってお父さんと会っているときは、アイドルの時よりずっと生っぽくしています。でも、それで嫌な子に見えるようにはしてはいけなくて。

 

神山 自分を使い分けているキャラクターって嫌われてしまいがちなんです。でも、レナの場合は、そうせざるを得ない感じをちゃんと出すことで、嫌な子には見えないようにはしたつもりですね。

 

 

 

 

――ULTRAMAN、SEVEN、ACEと3人のウルトラマンが登場しますが、それぞれの戦い方についてはどんな工夫がありましたか?

 

荒牧 戦い方については、アクションコーディネーターの川名求己さんと相談して決めていきました。ULTRAMANが基本だとすると、SEVENは刀を使うので自然と違いがつく。最後に登場するACEは小柄なので、トリッキーでアクロバティックな動きをさせよう、というふうに考えました。

 

神山 特撮のウルトラマンエースも、はじめて回転に横ひねりを入れているんですよ。それを踏まえて、ひねりを入れられるぐらい身の軽い方をお願いして。

 

荒牧 エースのアクションアクターの方は、予備動作なしで突然バク転できるんすよ。眼の前でそれをみると、素早すぎて「今、なにかしました?」という気分になります(笑)。あと特撮のエースは、光線技も豊富なので、そのへんもしっかりフィーチャーしたいなと思いました。

 

 

――ULTRAMANでいうと第1話で、進次郎の父、早田進もプロトスーツを身につけています。

 

神山 あれは苦労しましたね。お父さんの「私がウルトラマンだ」の場面が、どうもコントっぽくなってしまって、途中までは全スタッフが半笑い状態で(苦笑)。これをちゃんとシリアスに持ち込まないと滑ったままになってしまうなと。

 

荒牧 あそこは大変でしたね。何回リテイクしたんだろう……。コートを脱ぐ時のバサッという感じがないと絶対に成立しないからと言って。堂々とした感じを出すために、細かくアングルも変えたり、コートを開くタイミングを変えたり。コートを揺らすためのシミュレーションも随分頑張ってくれました。

 

神山 「私がウルトラマンだ」と言いながらコートを開いちゃうと、違っちゃうんですよね。もっと貯めてからのほうがいいだろうと。

 

――ウルトラマンのアクションといえばスペシウム光線も重要です。

 

 

神山 発射方式は、原作のこだわりポイントでもあるので、変更するかどうかはかなり悩みました。でも原作のポーズの通り、横になっている左腕から発射すると、横アングルから見せた時に、ビームが薄っぺらく見えてしまうというネックがあった。そこで原作に準じつつ、縦になっている右腕からビームが出る方向で考えてみました。

 

荒牧 手首をクロスさせるオリジナルのスペシウム光線のポーズから、左手を次第にスライドさせて、光線を放つ部分のシャッターを開けていくというアクションにしました。ただ、光線を打つ決めのアクションや変身ポーズはタイミングが難しくて、アニメーションをつける時に苦労しましたね。

 

神山 変身ポーズ・スペシウム光線。どちらも十何テイクは修正を重ねましたよね。

 

荒牧 スペシウム光線は、神山さんと二人で「2フレーム(1/12秒)遅い方がいい!」とか「ここの溜めはもう3フレーム(1/8秒)」とか(笑)、毎回やってましたよね。

 

神山 僕とか荒牧さんはオリジナルの『ウルトラマン』に触れている世代だから、頭の中にあるイメージは同じなんです。そこに近づけたいと思うんだけれど、実際に手を動かしているアニメーターは若いから、なかなかその感覚を共有するのは難しいんです。

 

荒牧  神山さんも僕も同時に「そのタイミングは違う!」と言ってましたからね。アニメーターは「この人たちは何にこだわっているんだろう」っていう感じになってましたよね(笑)。

 

神山  変身とスペシウム光線のタイミングについては、意見が合わなかったことはないよね(笑)。

 

荒牧 なかったね(笑)。結局あれは僕らの原体験に刷り込まれているんですよ。「オリジナルに忠実」と意識してやっているというよりは、体に染みこんでいるタイミングを再現しているという感じです。自分にとって最初に見たヒーローという意味で、『ウルトラマン』がここまで体に染み込んでいるんだということは、自分でも今回初めて気づいたことでした。

 

――最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。

 

荒牧 原作ファンの期待を受け止めつつも、アニメなりの面白さがちゃんと出た作品になりました。なので、そこを楽しんでほしいです。ストーリー的に若干違っているところも「こういう展開になったのか。それなら最後はどうなるんだろう」というふうに楽しんでもらえればと思います。

 

神山 基本は原作通りなんですが、映像化するにあたって、膨らましたり足したりした部分があるので、見終わると原作ともまた異なる感触になっていると思います。声をあててくれたキャストの皆さんの感想がまさにそういう感じだったので、そんなふうにアニメ『ULTRAMAN』を楽しんでいただければうれしいです。

 

取材・文/藤津 亮太

 

 

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