【青柳尊哉の徒然なるままに vol.2】ロマンスの神様どうもありがとう
2018.01.02
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連載【青柳尊哉の徒然なるままに vol.2】ロマンスの神様どうもありがとう
モツさん『どうも~モツ煮込みで~す!』
スジさん『スジ煮込みで~す!』
煮込s 『二人合わせて煮込み豆腐で〜す』
スジさん『…ところでさ、「煮込み豆腐」って何?』
モツさん『いや、目の前に書いてあるから』
スジさん『居酒屋でコラム書いてんじゃねーよ!』
モツさん『いや~煮詰まっちゃって・・・』
スジさん『あっモツだけにね』
モツさん『美味い!!!』
…無理だな、おれがM-1王者となる日はたった今潰えた。
そんな瞬間に立ち会ってくださった皆様ありがとう。
あけましておめでとうございます。
平成が30年となりました。
【平成】と言われて真っ先に浮かぶのは、ある企業の社長さん(S氏)とお酒を飲んでいた時に聞いた話。
「ぼくが高校三年生の時にさ、彼女が出来たんだけど、昭和が終わることになったその日、はじめて彼女の家に遊びに行ったのよ…」
と今から30年前を懐古するS氏。
彼女の親御さんが不在だったというその日を思えば、ぐっと力を込めたS氏の想いは想像に難くない。
冬休み、高校三年生、彼女と過ごす時間、彼女の香りのする部屋、親不在、あとは野となれ山となれだ。
ちなみに、この日は青柳家とって三男坊が誕生して初めて迎えた昭和最後の日だった…
当時、尼崎の社宅には黒電話とその電話台の横には丁寧に編み上げられた縦長のゴミ箱が置いてあった。幼児は確実に手が届かない高さのゴミ箱。
当然幼児がそこに行けば、倒す。散らかる。怒られる。
OH~神ヨ、ワルイノハワタシデスカ?
素材は忘れたがこのゴミ箱は今も実家で活躍している。物持ちが良いね青柳家!
この部屋で起きた「タカヤ少年母の一本背負いにより鎖骨骨折事件」尼崎最後の日編があるがこの話はいずれどこかで。
さて。話は戻して、今回の話は「S氏初めての彼女の部屋で起きた事件」である。
きっとS氏は何度となく確認したことだろう。
S氏「親、何時に帰ってくるの?」
彼女「今日は遅くなるって」
S氏「へ~…」
もう今回のタイトルは【ロマンスの神様どうもありがとう!】しかない!
いや【少女A】もありか?
「じれった~いじれったいそんなのどうでも関係な~いわ~♪」
折角なのでS氏の相手は少女Aと名付けよう。
S氏が緊張をごまかそうとすればするほど少女Aのハードルは上がる。
落ち着かない空気、悟られぬよう吐き出す言葉は長くは続かずまたやってくる張り裂けそうな沈黙…
時刻は14時を迎える少し前。
この空気に終止符を打ったのは、少女Aだった。
「じれった~いじれったい~♪」と歌ってほしいものだ。
女神降臨、天まで上る、我が人生に一片の悔いなし!
目をつむりその瞬間の訪れを心待ちにしていた
全身の集中力は界王拳100倍に相当するであろう。
「ガチャ…」
それでは歌います、聞いて下さい
「親は気まぐれ♪」
目を開けて視線を左に移す。
何度となく確認をし、気持ちを落ち着かせるように一点を見つめていた、閉ざされていた扉は今、開いている。
最高の瞬間のその裏にはヒタヒタと最悪もやってくるのだ。
S氏「……え~と、はじめまして」
のちにS氏は言う、
「後にも先にも一生忘れない【はじめまして】だね~」
最悪のシチュエーションでの想像力が現実となってしまったS氏。
対面に座る母様。大事な娘の母様。朝から延々と流れる天皇崩御のニュース。
高校三年生、頭を垂れ、両耳に届くのはニュースと母様の大変有り難い講義。
S氏は続ける
「で、ぼくの後ろにテレビがあってさ、本当にすいませんでした!!!って謝った瞬間、お母さんがさ〝あっ平成なんだ″って」
S氏がテレビの前で深々と頭を下げた瞬間流れてきたのは、皆様もよく知るあのシーン、小渕さんが【新たな年号は平成】と掲げた瞬間だった。
笑いながらS氏は「これがおれの平成の始まり」と。
…何の話を正月からしてるんだ!!!
おれはーーーーーーー!!!!
長々と、しかも自分の話ですらない!!!
これか、これが、〆切やネームに追われる作家さんの気持ちなのか。
ち、違うんだ! おれ書こうと思っていたことあるんです!!
待って待って待って~~~~~~…
無事にコラム連載が発表されたものの
二回目の連載は全く手を付けていなかった。
「ギリギリでいつも生きていたいから~♪」
【完】
なんてところで終わらせているんだ昨日の自分よ。
恐ろしい。恐ろしすぎてもう笑える。
考えてみれば2018年の「あけましておめでとうございます」の言葉はこの連載が最初の登場だな。
子供の頃一生懸命見ていた「新春かくし芸大会」が収録だと知り
『ん?じゃあ「あけましておめでとう」嘘じゃん!去年じゃん!明けてねーじゃん!大人は嘘ばかりだな!!』と母に食いついた日を思い出します。
少年タカヤよ。明けてないのに「あけましておめでとう」って言っちゃえるの
悪くないぞ。
年末にかけて色んな情報が解禁されていったわけだけど、やはり
「劇場版ウルトラマンジード つなぐぜ!願い!!」の発表が一つ大きなニュースかな。
「ウルトラマンオーブ THE CHRONICLE」も驚きの発表だったね。
ジードの撮影はだいぶ前に終わっていたからしらばっくれるのがしんどかったよね。
「ジャグラーはジードに出ないんですか?」
「出ないよ~」
「次ジャグラーにいつなるんですか?」
「いつかな~~」
などなど…
許せ少年タカヤよ。やはりかくし芸は収録でなければならなかった理由がある。そしてそれは決して嘘をついているわけじゃない。
そしてまだ発表できずに伏せている情報もある。
…い、い、言いたい。
明けましたこのタイミングで言いたい。
Trrr…Trrr…
『もしもし、青柳ですけど、あのコラム連載でいっこ情報解禁してもいいですか~?』
「ダメですね」
ガチャッ!
ツー、ツー、ツー・・・
少年タカヤよ、大人になったら自由なのかと思っていたが、簡単にはいかないようだ・・・が、おれは諦めの悪い大人だーーーーーー!!!
Trrr…Trrr…
『もしもし、青柳ですけど、コラム連載でジードのアフレコの話してもいいですか?いや、ダメだって言われても僕は・・・』
「いいですよー」
ガチャッ!
ツー、ツー、ツー・・・
ということで発表します。
実は、ジードのアフレコを数日前にやったんですよ。
このアフレコスタジオと呼ばれる場所でマイクの前に立つと思い出す…
あるアニメ作品に声を掛けて頂き意気揚々とのぞんだあの日、スタジオに入って暫くして、普段自分が息をする芝居場とは打って変わった空気に完全に飲まれた。
そして己の力の無さに泣きそうだった。
否ちょっと泣いた、トイレで。
周りの声優さんが目まぐるしくマイク前を入れ替わり立ち代わり、それはそれは颯爽と自分の出番に合わせて台詞を言っていくわけ。
免許取り立てで、首都高を車線変更する時ばりにモニターと台本交互に見てたね。
『ヤベー、ヤベー、いつ行くの? え? おれの番まだ? つか、早くない? 速度超過でありません? すいませーん若葉マークですよ~こちら若葉マークさんですよ!!! わー、事故る事故る、に、逃げたい・・・よ、よし。やめよう車線変更。もうおりません高速! 流れには乗れませんが、このまま流されていきますので。安全運転安全運転・・・
ん? あれ? こんなところに素敵なマイクが一本ポツリと。うん。お邪魔するわけにはいきません。みなさ~ん、若葉マークさんはココで台詞出しますんで、あっ台詞のタイミングだけはバッチリ練習してきたんで任せてください! ・・・、えっ? 邪魔ですか? ココハツカワナイ・・・ひぃっ!!!』
んで自分のタイミングを見失い渋滞を引き起こしたよね~
あの恐怖はいまだに忘れられない。
本当に声優さんたちは凄い!職人芸だね、ありゃ。
みんなスラってマイク前立ってさ、「い、い、い、い、一体いつ台本めくったんすか??」って感じでサラッと台本見てるんよ。
「カッコいいな〜…」って。
まぁそんなルールないんだけど、郷に入ったら郷に従え! ですよ。
「よし! やってみよ♪」ってことで若葉マークさんもマイク前に立ってそれっぽく台本片手にして実践です!!!
少しはマイク前の争奪戦にも対応力をみせていたころですので、渋滞は巻き起こさず若葉マークさんの出番がやってきます。
『キタキタキターーー!!! スラっと立って、台本片手に、チラッと台本、チラッとモニター、ウンッタッタ~、ウンッタッタ~のリズムね。オーケー、モーマンタイだよ! やるぞー! おれはやる子だよー!! 若葉マーク外しちゃうよーーー!!! ・・・・・、え? あれ? イメージと違うんだけ、あっ! 待って、待って、まだ台詞言い切れない、え? つか台詞どこいった? 台本いつ見るの? つか、いつ目を放すんですか??? ・・・、あの、・・・それ、どのシーンですかね?
・・・・、Ω\ζ°)チーン』
外しません、若葉マーク。決して外すことはありません。もうそんな無謀なことしません! はい! 若葉マークごときが台本片手なんて間違っていました! 覚えます、台詞! 台本とか見ません!! モニター一点集中型です。
以来、台本片手に持っているものの、台本は全く見ないスタイルでやらせて頂いております。
あぁ~思い出しながら背中ザワザワするわ~
若葉マークさんはアニメをやらせてもらって思うのです。
【距離感が測れない】
自分の芝居に声あてるのは、距離感を自分で演じて知っているからそこの距離感に捉われないんだけど、アニメは距離を掴むんが本当にムズイ。
同じアフレコでも、自分に声をあてるのと、キャラクターに声をあてるのは、全く持って全然違うね! もうね、神だよ、神! 声優さんとか気軽に言えないから!
最初何度やっても、キャラクターに声が乗らないのよ。手前で落ちて行っちゃう感覚。
単純な強弱なんじゃなくてね、台詞を吐き出しているときはマイクを通しモニターに向かって、でも実際は画の中のキャラクター同士の距離感で会話が進む。
この距離感が上手い人の芝居は見ていて、聞いていて心地よいのよ。
「ほえ~…」ってなる、マジで。
だから若葉マークさんはある方法を思いついいたのです。
何てったってセリフは頭の中です。どのタイミングで台詞を出すのかも、タイミングはバッチリ!となれば残されたのは・・・
MC 「さぁ始まりました、若葉マークさんアフレコ収録のお時間です。ゲストはおなじみのこの方々」
モツ 「ど~も~モツ煮込みで~す!」
スジ 「ど~も~スジ煮込みで~す!」
MC 「今日の若葉マークさんはいかがでしょう?」
煮込s「煮込みが甘いね。」
MC 「若葉マークさんは名案を思い付いたとおっしゃっていましたが?」
煮込s「まぁ結果は見えてるけどね」
MC 「おっと、そうこうしてるうちに若葉マークさんの順番がやってきそうです。何度かの実践の成果か今日はリラックスして見えますが、お二人が見ていかがでしょう?」
モツ 「アイツ、そうゆう所がダメなんだよ、ビビってるくせによぉ!」
スジ 「外面ばっか気にしやがって、カッコつけてんじゃね~ぞ!」
MC 「さぁ若葉マークさんの名案は炸裂するのか~?」
一同 「!!!!???」
MC 「な、な、な、な、なんと若葉マークさん動きながら台詞をだしているーー!!!わかっているのか彼は!?ココはアニメのアフレコスタジオだぞーーー!!!」
モツ 「あいつはあれだから。」
MC 「あれ、とは?」
モツ 「ジーっとしてても」
スジ 「ドーにもならねぇから」
MC 「ジーーーーード!!!」
「そう! 私が思いついたのはいつも通りやる! だ。これしか浮かばなかったのだ。全身で、固まった心を開放してそれはそれは自由に、翼を広げて。まさに名案! これで距離感問題はかいけ・・・えっ? あ、録りなおし、音が、あ、服の音が、色々拾っちゃうから、動きは小さめで・・・で、すよね~。あ、マイクも、もう少し離れますか? で、すよね~。知ってますよ~、ホントすいませんでした」
もう一度お伝えしよう。声優さんは凄いことをしているぞ!
わずか数秒の間に恐ろしい数の技を繰り出し判断をしている。それはまさに、百裂拳だ。ゲーセンで見つけて調子こいてやってみたらゼーゼーなるやつだ。
ちなみに、この若葉マークさん初陣のアニメ現場の座長が、ウルトラマンジードでペガ役の声優【潘めぐみ】さんである。その節はご迷惑をお掛けしまくりました。
ジード劇場版のアフレコスタジオで再会する事は無かったのだけど、こうして巡り巡って共演する形が待っているのは感慨深いものがあるな〜…と。勝手に。
この特撮作品と呼ばれるもので、面白いなって思っている一つに
【演者三位一体】がある。
俳優、声優、スーツアクター。全員演者にしてやる事が違う。
全員が計算の中で成立しているから、そしてこれはこの世界特有のものなんだと、それが面白い。
俳優はスーツアクターさんを相手にしながら、未だ見ぬ声優さんの芝居と向き合っている。
スーツアクターさんもまた、自分の持つ台詞の向こう側に一挙手一投足に声優さん達がいる事を知っている信頼がある。
声優さんは出来上がった画に、嘘のない魂を吹き込んでくれる。
三つが相手を思いやる矢印が向き合っているのが見える。
アニメのスタジオでは若葉マークを外せずにいましたよ、えーえー。
でも、今回は違う。おれは全身で芝居していいのよ。スーツアクターさんと声優さんを信じて投げるのよ、台詞を台詞じゃないボールを。
細かくね。きっと想像も出来ないリアクションが画の中で生まれるだろうって。
全ての答えは映画の中にある。
今回も長々とお付き合いいただきありがとうございました。
おや? 次回の〆切稽古中ではないかい?
で、次々回は本番中ではないかい・・・
【Vol.3 ゴーストライターを雇う】の巻 ( ..)φメモメモ
本年も心の底から、宜しくお願い申し上げます!!!(まだだけど( *´艸`)www)
2018年、よい一年を過ごしましょう!!!
Profile
青柳尊哉(あおやぎ・たかや)
1985年2月6日、佐賀県出身。俳優、アルファセレクション所属。2016年「ウルトラマンオーブ」にてオーブの宿敵・ジャグラスジャグラー役を演じる。特技はサッカー、水泳、アクション・殺陣、料理(イタリア料理・デザートなど)。
http://www.a-selection-pro.jp/actor/takaya.html